06. 11月 2013 · 楽器の演奏で「歌う」とは? はコメントを受け付けていません。 · Categories: ピアノレッスン, 音楽表現

harlem - ella

ピアノを習っていると、先生に「歌って〜、もっと歌って〜」と
言われることがあります。
私もずいぶん昔、そんなふうに言われた覚えがあります。

そのころは、あまり深く考えず、「歌って〜」というのはつまり
なんとなく感情を込めて大げさに弾けばいいのかな・・・程度に考えていたかも。
しかし、よく考えてみると
実際に歌を歌うわけではなく、楽器を弾いているのに「歌って」とはこれいかに?
という問いも立てられるわけです。

そして、今の私なら その「歌って」の本意がわかる気がするのです。
今日は、楽器の演奏で「歌う」ということについて考えてみたいと思います。


  ■オノマトペで歌う

歌詞がなくて、メロディーを歌う時、どうやって歌いますか?

「らーららー」とか「タラッタラー」とか
いわゆる、オノマトペ(擬声語)を使いますね。

このオノマトペ的歌は、音楽フレーズのつながりや、長さ短さ、
強さ弱さ、 固さ柔らかさ、ニュアンス、温度、明暗、勢い、喜怒哀楽・・・など
音楽のエネルギー状態をそのまま表わします。

使う発音と、その歌い方でニュアンスというのはずいぶん違ってきます。

たとえば、ベートーベンの運命のテーマ。

「ジャジャジャ ジャーン」というと、激しそうだけどちょっとベタッとしたかんじ。

「ッダダダ ダァーン」というと、スピード感があって重いかんじ。

「スタタタ タ〜〜ン」というと、軽すぎなかんじ。

言ってみるだけで違うのがわかるでしょうか。
歌うっていうのは、簡単に言うとこういうことです。

実際、演奏をする時、
心の中でそのフレーズをどういう発音でどう歌っているかによって、
出てくる音はその通りに変わってきます。

「ッダダダ ダァーン」だと思っていれば、心の中もそういうエネルギー状態になり
そういう手と身体の使い方になり、結果としてそういう音が出る。

逆にいえば、「スタタタ タ〜〜ン」だと思いながら
「ッダダダ ダァーン」という音は出せないのです。

心と身体は連動しているからです。

 

■心の中でどう歌っているか

だから、楽器の演奏者は
口には出さなくても、そんなふうな歌を心の中で本当に歌っています。
それが「歌う」ということです。

初心者の方の演奏が、なんだかたどたどしく棒読みっぽいのは
手の技術が追いついていないというのもありますが、
それ以上に 心の中が「棒読み」だからというのも大きいです。

音符を追ってスイッチを押すのに精一杯なため、
心の中では「ど・ど・れ・み・ど・ら・そ」
ドレミを順番に読み上げているような状態になります。

心の中が棒読みだと、出てくる音もあきらかに
「ど・ど・れ・み・ど・ら・そ」と聴こえるのです。

そんな状態から少し進化して
心の中で「ラララ ラーラララ」と歌えるようになると
少しメロディーに聴こえてきます。

さらに「ラーランラ ラ〜アンラーラ」と心の中で歌えれば
もっとイキイキ、はずんだかんじに。

さらに

「ウえ〜ウォ むう〜〜いーて っっあぁ〜〜るこうウォウォウォー」
心の中で坂本九さんと一緒に歌いながら弾くならば、
楽器で弾いているのに歌詞まで聴こえてくるような、見事な演奏になるはずです。

 

  ■口三味線、口太鼓

shamisenbijin

口三味線、という言葉があります。
三味線音楽を伝えるために、鳴っている音をオノマトペで歌うのが口三味線。
「テン ト ツ シャン ドン シャン」などと歌って覚えるのが、昔ながらのやり方です。

三味線だけに限らず、もともとアジアの芸事は楽譜というものがなく、
すべて師匠からの口伝えや、見て、聴いて、まねる、盗む、という形で
伝承されてきました。

まさにこれは「楽器を弾くときは歌う」ということの本質を
表わしていいると思います。
本当は、歌っていないと弾けないはずなのです。

インドの「タブラ」という太鼓は、ものすごい速さで叩いたりするのですが、
タブラの奏者は、そのものすごい速さの叩き方もぜんぶ「歌って」います。
歌えているから、叩けているんですね。

次の映像は、ジョン・マクラフリンというアメリカ人ギタリストが
1970年代にやっていた インドのミュージシャンたちとのコラボレーション。
太鼓は1人はタブラ。壷みたいなのはガタムだと思われます。

太鼓奏者がこういうふうに歌って叩いているのか、というのがよくわかります。

 

■そしてジャズのスキャット

音楽そのものを「歌う」ということ。
それにはオノマトペが重要な役割を果たしています。
オノマトペによる音とニュアンスが、音楽そのもののエネルギーを表わしています。

そのわかりやすい例がジャズボーカルの「スキャット」でしょう。
いわゆる「シュビドゥワ、ダバダ」みたいなやつです。

独特のオノマトペで、ジャズ特有のアクセントやフレージング、
スイング感ドライブ感を見事に表現して歌うものです。

 

次の映像はジャズボーカルの女王様、エラ・フィッツジェラルドが
スキャット一つで楽器プレイヤーとセッションする映像です。
即興で繰り広げるスキャットが、後半は楽器プレイヤーとの掛け合いになります。

これを聴くと、まさに楽器も歌も同じ「歌」を歌っていることがわかると思います。
サックス奏者やトランペット奏者も、 声には出していないけれども、
心の中ではそういう風に「歌って」いるから
そういう「歌」が楽器からあふれ出るのです。

そして、歌っているエラ自身も、楽器から出てくる音を
そのような「歌」として聴いていることがよくわかります。

音楽は「歌」でできているということがよくわかる
すばらしい演奏をご紹介して終わります。

 

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